「最近は世知辛い世の中になったものだ」などとよく使われる言葉ですが、内容としては良い意味に使われることはありませんね。
しかし、世知(智)は仏教語で「世間で用いられている智慧」で処世術のことですから、そう悪い意味ではありません。この対語の「仏智」が「ホトケの智慧」ですから完全なわけで、世知は相対的に「小賢しい」「こすっからい」と悪く受け取られたのです。
仏教では智慧を大事にします。お釈迦さまがこの世界の真理を解き明かされ、だれもが安楽の世界を実現できるように、理論と実践法を示されたからです。まず、この世が苦であるという現実を受け止めます。病人が自分を病気であると認めないと治療は始まりません。次になぜ苦しいのかを理解すべきです。病気がどんな原因で起こったかを正確につきとめます。治療にかかる前に大事なのは、本当の健康はどんなものかを知らせることです。苦を脱した状態のすばらしさを認識すれば、困難も克服できます。最後は治療の実践と健康の維持を学びます。これがお釈迦さまの説く「苦集滅道」の四諦説です。
最後の道諦には、苦しみのない理想の状態をすみやかに獲得し、維持するための八正道が説かれます。正見(正しい信仰)正思惟(正しい意志)正語(正しいことば)正業(正しい行い)生命(規律正しい生活)正精進(努力と勇気)正念(正しい目標意識)正定(精神統一)です。でもこれを全部やらなくちゃならないんだったら、ヤーメタ!と豊かさに慣れ切った日本人は思うでしょう。それが救いがたいところです。
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