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住職の独り言」・・・・その146![]() いかがお過ごしでしょうか? 先日、気象情報でこの先、三か月間の予想が出されていました。(関東地方)それによりますと、梅雨は後半に雨が多く、8月は平年以上の暑さになる、ということです。先のことは、確実ではないですが、近年の予想確率は高くなっていますからね。 自然現象、逆らうわけにはいきませんが、今からできる対応策は取っておいた方がいいかもしれません。 さて、広く知られたことわざで、日常会話に出てくるもので、「蒔かぬ種は生えぬ」というのがあります。 一言でいえば、取入れを望むなら種を蒔くことが第一だ、ということです。つまり、原因がなければ結果はないというたとえにもちいられます。 私たちはともすると、よい結果だけを望んでしまいます。その結果を生み出すための着実な種蒔きは怠りがちになってしまいます。小生も、土いじりが好きなので、境内の片隅の小さな畑で、野菜や草花を育てたりしています。4〜5月になると、種を蒔いたり、苗を植えたりしていますが、時には時間が無いことを理由に、土を耕さなかったり、種蒔きを忘れてしまったり、その結果は無残なものです。 土を耕し肥料を入れて種を植える。その後も、草を取ったり、虫がつかないようにしたり、と手を抜けません。しかし、それほど一生懸命手をかけても、よい結果が生まれるとは限りません。難しいものです。 この言葉の意味するところは、何か事をなすにあたっては、まず行動(行為)を起こさなければならない、ということなのです。動かなければ何事も始まらない。ということの大切さを示しているのです。「太鼓は打たねば鳴らぬ」という言葉もあります。 仏教という薬があってもそれを服用しなければ私の身にならない、という喩もあります。どんなにいい薬があっても、その効能書きを読んでいるだけでは何の効果もありません。まず服用することです。その薬が私たちの病を治してくれるのです。 あるミュージシャンが、全国の中学・高校をまわって講演していた時、彼はギターの名手といわれる人ですが、その話の中心はひとつ、 ギターは弾かなければ音が出ない。 ということでした。当たり前すぎるほど当たり前のことですが、小生は妙に納得したものでした。ギターの教本を読むことも大切ですが、読んでいるだけではだめなのです。手に取って弾いてみなければ絶対に音は出ません。まず弦に指をあてることなのです。 最近、若者が夢を語らなくなったとよく言われます。願いとか夢を持てなくなった時代となった、といった方がいいかもしれません。 小生の若かりし頃、友人と話したり、人生の大先輩に問われると、自分はこういうことがしたい、こんなふうになりたい、とすぐに答えが出せたものでした。今から思えば、よくあんなことを言ったものだと思います。 だれもが夢があり、願いらしきものをもっていました。それが果たされるかどうかは別として、そんな時代でした。その後高度経済成長という時代になり、日本中がお金お金という時代。それまでと違って豊かな生活になりました。テレビ、洗濯機、自動車が当たり前の時代になり、その道を突っ走り、エコノミックアニマル(経済的動物)という言葉が外国から日本人に投げつけられました。 有り難くない言葉ですね。それはお金のことしか考えていない人間問ことです。そののち、経済もかげりを見せはじめ、低成長時代に入り、さまざまな問題が浮上しはじめました。お金や物だけを頼りに生きてきた人間のツケが出てきたのです。すべてを貨幣価値に置き換えて生きてきた人間のひずみがでたのです。人間までも金銭に置き換えられ、人間が役に立つ人間と役に立たない人間に分断され、人間同士がギクシャクしたものとなってしまいました。 「物で栄えて心で滅びる」(高田好胤師) と言われたのもこの頃です。 「心が滅びたから物が栄えたのではないか」(大谷光真師) という指摘もありました。 考えると、敗戦後の混乱、経済成長の時代、バブルの時代、市場原理、そして今、格差社会の時代と言われています。しかし、考えようによっては、危機は好機だと考えることができます。わが身も心も失った時代は、逆にそれを取り戻す好機ではないかと思うのです。 いま、私たちがそして、この国が種蒔きをする時に来ていると思います。競争原理による人間の悲惨を無くすために、国策であった原発の誤りを認め、また人間が安心して生きていける社会を目指しての種蒔きをする時でしょう。そのために、政・官・業・学者・国民がともに手をたずさえることが求められているのです。いつの日か必ずその実がなることでしょう。
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