最終更新日:平成31年2月5日









次回 「立夏投句箱開き」は2019年5月6日(月・祝)に行います
境内を吟行していただき、ふるってご参加ください。







あの手・この手・奥の手

 人間が他の動物と違うことのひとつに「手を使う」ことがあげられますね。人間は4本足のうち前の2本を手に進化させて、いろんなことをしてまいりました。2本の手は大変役立ってきましたが、2本ではとても足りないお方もいらっしゃいました。たくさんあれば、あの手この手を使って何でもできる、いよいよとなったら奥の手もある。
 手が2本しかない人間社会で「あの手この手」というと、いろいろな手段方法を指し、「奥の手」はとっておきの手段方法を指しますが、あの手この手という発想の元祖は千手観音様でしょう。
 千手観音様は六観音のおひと方で、限りない慈悲を表す菩薩様です。あまたの衆生をあわれんで救いとらんとするためには、2本の手ではとてもたりません。そこで我が手を千本に増やし、文字通りあの手この手奥の手で私たちを助けてくださいます。梁塵秘抄(りょうじんひしょう)に「万の仏の願よりも千手の誓いぞ頼もしき」とあるとおりでしょう。千の慈悲の手をそなえて、生あるものをどの手で救おうかと工夫なさっておられるのですね。
 また、千手観音様はインドのシヴァ神に比肩する実力者で、日本では奈良時代から信仰されている延命(えんめい)滅罪(めつざい)除病(じょびょう)の観音様です。そのお姿は、四十二()・二十七面で表されているのが普通ですので、千手と言っても、広大無辺を千という数で表現したのだと考えるのがよいでしょう。唐招提寺金堂の千手観音像は、実際に千の手を持っておられるそうですが・・・
 千の眼をもって常に私たちを見守り、千の手で油断なく救いとってくださるなんて、有り難いではありませんか。私は、プール監視をこの観音様に頼んだら最高だろうなどと、失礼なことを考えてしまいましたが、微力な人間である私たちにもできることは、せめて精神だけでもこの観音様に(なら)うことでしょう。そして、この2本の手を有効に生かし、世のため人のために使いたいと念じてやまない次第です。


合 掌
平成31年2月1日

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